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 携帯は通じない。部屋ももぬけの殻。居なくなったことに気がついたのは、情けなくも彼女の部屋に通わなくなって半年弱経った頃だった。言い訳を並べると、メッセージの返信がやけに遅いのは就活が立て込んでいるせいだと思っていたり、自分自身もここ半年とんでもなく忙しかったのだけれど、例えそれをもぬけの殻の部屋に伝えたってなにも返事は帰ってこない。

 クソヤロ―が。どこ行っちまったんだ。苛立ちに任せ物を蹴り上げても鈍い痛みが足先に伝わるだけで、ただただむなしい。電話をかけても返答はない。アドニスも、朔間さんも、あのスケコマシヤロ―だって、あいつの居場所を知りもしなかった。他の旧友に言ったって居場所を知らないと、むしろ大学に入り一人暮らしをしていたことすら知らないヤツが多くて、もしかしてあいつは高校卒業と同時に姿を消すつもりだったんじゃないかと考えがよぎりぞっとした。ぞっとしたと同時に、なぜあの日、気がつけなかったのかと自分自身に苛立ちがよぎる。

 例え彼女が見つからなくたって、例え苛立ちが雪のように降り積もったって季節は巡る、時間は過ぎる。彼女がいないまま、幾度か季節が変わり、時間が過ぎるたび、少しずつだが自分、ひいてはUNDEADの名声は大きくなる。大きくなる度癖で携帯を開き彼女のメッセージ部分を開いて、閉じる。そういえば学院時代はいの一番に連絡できていたことを思い出して、舌を打つ。黙っていなくなった彼女に腹が立つ。それ以上に頼るだけ頼って手放してしまった自分に、一番腹が立つ。

 あいつがいなくなって不便な事はない。生活は充実している。仕事だって順調だし、相変わらず朔間さんは手厳しいし羽風さんに実力差をまざまざ見せられるし、アドニスの体力には勝てそうにねえけど、高みがあるからこそがむしゃらに走り抜けられる。己を高められる。だけどふと、些細な嬉しいことやちょっとしたしょうもないことを共有したくて、彼女を思い出す。学院時代に常に隣に居てくれて、卒業後も自分を受け入れてくれた、彼女のことを。

 ああこれは恋なのだと、既読の付かないメッセージを抱えながら、一つ、舌打ちをした。

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