いつか夜が明けたら迎えに来て_04

 その日の晩、夢を見た。
 バルバトスの部屋から彼らの元に戻る夢を。
 うろうろと落ち着きのないマモンは私の姿を見るや否やすぐに駆け寄ってきてくれて、その後に信じてた、とサタンが言って。レヴィはアニメをリアタイできなかったことを文句をいいつつ喜んでくれて、ベールはベルフェとマモンごと、強く私を抱きしめてくれて。
 そうだリリスのことも話さなければならない。心配そうに視線をよこすルシファーに、すべてを伝える。そうかリリスの子孫だったんだね。頬ずりをするアスモの滑らかな肌がこそばゆい。
 すべてが幸せに満ちていた。星降る夜も、湛えた湖もすべてが煌めき、祝福に揺れていた夜。

 しかしそれはすべて夢だった。

 陰鬱な朝は平等に訪れる。夢の欠片に、ぼろぼろ涙を零す私が力なく窓を見れば、しとしとと雨が降り出していた。絹糸のように細い雨はまるで世界から私を遮断するように、断続的に降り続いている。
 扉の向こうには喧噪。きっと朝食の時間なのだろう。立ち上がる気力も無いまま、ランプの消えた薄暗い天井を見上げる。
 瞬けば、一筋涙が頬を伝った。
 何で悲しかったのか、思い出そうとすればその欠片は無残にも消えてしまう。夢とはそういうものだ。無責任な残滓だけをおいて、忘れてしまう。
 呆然とした頭の隅で、RADへ向かおう、と私は立ち上がる。体調不良で欠席という手もあったけれど、留学生が易々と休んでいいとは思えない。
 ――なんて、勤勉なふりをして、私は現実から逃げたかっただけなのかもしれない。安直な選択肢を選び取った私はよろよろとパジャマを脱ぎ捨てる。ガラス越しに涙が伝う顔が見えたけれど、何が悲しかったのか、今の私にはよくわからない。

←03  |top|  →05