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彼が「スタート地点」にたどり着いたとき、私は姿を消そうと決めていた。誰にいうでもなくひっそりと、春を告げられた雪のように、ただ静かに消えようと、そう決めていた。よくよく考えてみれば、卒業してすぐに消えるつもりだったのが、少しだけ延びただけの事だ。まあ「少しだけ」と称するにはちょっと長い期間だったけれど、たった二年間の青春時代を分かち合った盟友を守る為ならば、その期間だって大切な時間だったように思う。
ねえ晃牙くん、君は今何を見ているの? 何を感じているの? 残念ながらもうこの場所からではわからないけれど、憧れ、焦がれ、追い求め続けた背中の隣で景色は綺麗ですか? いつかまた教えて欲しいと思う日もあったけれど、やっぱりだめだね。きみと会うと、おそらくきっと、私はあの頃の「恋をしている私」に戻ってしまうから、こうして黙って消えることをお許しください。
アナタは焦がれた背中を追いかけて追いついた。私はその背中に手を伸ばせなかった。ただそれだけ。それだけの小さな違いが、歪みが、今でも私の胸を締め付けます。
拝啓、愛しい人。どうか健やかで、幸福でいてください。