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雨を待っている

 ジメジメとはっきりしない天気だった。晴れでもなく雨でもなく、陰鬱な色を落とした雲を見上げて、憂鬱を体現したような後輩の顔を見あげた。彼は不機嫌そうに空を見上げている。どうやら憂鬱を通り越して苛立ちが出ているらしい。吐き出されるため息の色は、暗い。

「不機嫌だ」
「こういう天気好きじゃない……」
「雨の方が良かった?」
「雨は鬱陶しいッス」
「晴れてる方が好み?」
「暑いとイライラする」

 彼はそういうと胸中のイライラを撒き散らすように細く長く息を吐いて、最悪だ、と呟く。彼にとって最悪ではない日はあるのだろうか。まるで緑くんの御機嫌のように重苦しい空を見上げた。水分を沢山すった雲は暗く鈍い。

「先輩は」

 翠くんが私を見下ろす。青空のような彼の瞳が少しだけ細まる。

「晴れと雨、どっちが好きですか」
「うーん、今日だったら雨かな」
「今日だったら?どういう意味ですか」
「ほら雨降ったら二人で相合傘とかできるなーって、なんて」

 少しでも明るい話題にしようと言葉を並べてみたが、こじつけ過ぎただろうか。私はへらりと笑うが、翠くんからアクションはない。だめだったか、と肩を落とし歩きだそうとすると軽く振った腕が乱暴につかまれた。そしてそのまま彼は踵を返し何も言わず歩き出す。

「ど、どこにいくの?!」
「適当にファミレスでもいきますよ」
「何で?!」
「なんでって」

 彼は歩みを止める。振り返って、やはり不機嫌そうな顔をして私を見下ろした。

「雨を待つために決まってるじゃないですか」