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外は雨模様

 外は雨模様。しとしとと静かに滴が垂れる。透明な傘に落ちてくる滴。隣には少しだけこちらに傾けて傘を持ってくれる真緒くん。濡れちゃうよ?と私が言うと、濡れないよ、と彼は優しい嘘を付く。彼のブレザーに水玉もようが浮かんでるのを見て、嘘ばっかり、とむくれると、鋭いなあ、と彼は笑った。

 お世話が好きな真緒くんは、傘がなくて途方にくれている私に、帰ろうと言ってくれた。そして自分の透明なビニール傘を差すと、嬉しそうに手招き。いつもなら遠慮して雨がやむまで何かしらのお仕事を探すのだけど、彼の笑顔があまりに素敵で素直にその招待を受けた。

 一人分の傘の下に二人分の足音。ぽつぽつと奏でる雫の和音。とくりとくりと高鳴る心臓の音。全てが溶け合い、混ざり合って、私たち二人の間を泳ぎ回る。いろいろな音を聴きながら、なんだか照れるね、と真緒くんに笑いかけた。真緒くんも、顔を朱に染めながら、そうだなあと笑う。

「雨じゃなきゃ遊びに行けたんだけどな」
「私は雨でよかったよ、じゃないとこうして真緒くんと帰れないじゃない」

 真緒くんは、そんな私の言葉に照れたように笑い、乱暴に私の髪の毛をかきまわした。

「あんまり可愛いことばっかいってると、さらっちまうぞ?」
「ふふふ、何処へ連れてってくれるの?」
「そうだなあ」

 彼はしばらく思い悩んだあと、少なくとも二人でいれる場所だなあ、と呟いた。じゃあ今と変わらないね?と私が笑うと、それもそうだな、と真緒くんも笑った。

 外は雨模様。しとしとと雫が世界を濡らす。降りしきる雨の中、傘がひとつ、足音は、二つ。