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あなたの力でハッピーエンドにしてあげてったー_零あん

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あなたは
『“好き”は幸せで楽しいものだと思ってて、
 こんなに苦しいなんて知らなかったって
 眉間にしわを寄せる』
零あんを幸せにしてあげてください。
https://shindanmaker.com/474708
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 甘い砂糖菓子は舌の上で溶ける。幸福感を与えながらゆっくりと、確実に。その幸福に微睡み、舌を打つように転がすのが、恋だと思っていた。
 視界の端に捉えた足取りおぼつかない彼の姿を目で追いながら、心に走るズキリとした痛みに私は首をかしげた。恋はキラキラと甘いものだと信じていたはずなのに、胸中を支配するのは鈍い痛みと、どす黒い感情。自分への劣等、他者への妬み、彼を見るたびにこんな感情知りたくなかったと心底思う。それでも目で追ってしまう。知りたくなってしまう。それがさらに胸を痛めることと分かっていながらもなお、愚かしく、彼を追う。

 どうやら視線に気がついたようで、朔間先輩は私の顔を見ると気だるそうに緩く手を振りながら、やはりおぼつかない足取りでこちらへとやって来る。

「嬢ちゃんや、浮かない顔をしてどうしたんじゃ」
「ちょっとだけ、気分が悪くて」

 そう言葉を濁す私を見透かすように紅の双眼は妖しく光る。気分が悪いのか、と彼は私の言葉をなぞりながら、おもむろに私の毛先を指先に絡める。

「考えすぎは毒じゃぞ」
「そんなこと言われても」
「のう、我輩にそれを半分預けてみんか」

 彼の提案に驚いて私は顔をあげた。彼はひとつウィンクをこぼして、くるくる巻かれた毛先から指先を抜き取る。そしてそのまま輪郭を沿うように指先を首もとへ滑らせて、掌が丁度うなじに来た辺りで、彼は大きな手で私の首を包み、自分のもとへと引き寄せた。

「我輩にはその権利があるように思えるが」

 耳元で囁かれた言葉は、先程までおぼつかない足取りで歩いていたと思えないほどにはっきりと空気を震わす。彼の紅の瞳からは、どこまで彼が理解しているのか測るのは困難に思えた。ただひとつ言えるのは、穏やかなこの甘い体温と、痛いほどになる心臓の音がまさに恋なのだと、私は彼に恋をしているのだという事実を知らしめていた。