case03_そうして、
「エルク、誕生日おめでとう!」
「うお!もうそんな季節か、はええなあ一年」
「エルクったらいつも忘れちゃって」
「ちょっと前までは覚えてんだけどなあ」
大好きな料理を並べて、ささやかに飾り付けも施して。
小さなパーティ会場のような料理の数々に、エルクの心は既に小躍り状態。
いつもここに帰ってくると豪勢な食事を出されるのだが、今日だけは別格。
自分の好物のオンパレードに思わず頬が緩んでしまう。
エルクが料理に気をとられていると、リーザがそっと自分の椅子をひいてくれる。
どうぞ、エルク。
彼女の促しに、照れ笑いを浮かべながら応じる。
なんだか主賓気分だな。
そんな言葉に、主賓じゃない、とリーザは笑顔を浮かべた。
思い返してみれば、沢山の人に祝われた気がする。
父さん母さん。
そうして不器用ながらとても二人で食べきれない量のケーキを買ってきたシュウ。
少ない物資の中で多量のごちそうを作ってくれたアークや皆。
そうして。
正面に座る彼女の姿を見て、エルクはふいと視線を泳がせた。
そして、こうして毎年忘れずに祝ってくれる、リーザ。
いつも誕生日を思い出すのは彼女に言われてから、なんて情けない事この上ないけど、
この瞬間はやはり嬉しい。
緩んでしまう口を真一文字に結んで、エルクは姿勢を正して座り直した。
軽く咳払いして彼女に目線をしかと向ける。
リーザは一瞬驚いたような表情をしたが、すぐに柔らかい、いつもの笑顔を浮かべた。
「……いつもありがとうな」
「どういたしまして」
なんかその、上手く言葉にできないけど。
感謝や嬉しい気持ちは心の底から溢れているのになかなか言葉にできなくもどかしい。
なんというか、と次の言葉を探していると、
リーザが小さく笑い声をあげて、はにかんだ。
「エルク」
「……ん」
「お誕生日、おめでとう!」