「……まず話を聞こう」
「作ったんです!」
「それはな、見たらわかるというかな、売ってはないだろうなあまあ」
「俺が設計したんだぜー!」
「ばっかあたしがバネの部分考えたんでしょうが!」
「デザインは僕がしたんですよ!!」
「あー!もうわかった!わかったからな、な?どうしてそうなった?」
アレクの手に握られている巨大なそれを見て、エルクは大きく息を吐いた。
プレゼントがある、と聞いてわざわざフォレスタモールまで足を運んだ、結果がこれか。
崩れ落ちたくなる気持ちを抑えて、彼が手にするそれを再度見つめる。
自分の身長の1/3はあるだろうそれは、
先ほどからアレクの手の上で不気味に伸び縮みしてこちらを見ている。
「私も手伝ったのよ」
「はあ?!リーザも?!」
「だってエルクなかなか帰ってこないから、こういうときにしか贈り物ってできないし」
すこし憂いを含んだ彼女の横顔がエルクの良心をぎりぎりと締め付ける。
そういえばここのところ忙しくて帰ってこれなかったなあ。
帰って来れなかったけど、これか。
その仕打ちがこれか!!
いや、もしかしたら純粋に、純粋に俺の事を思って作ってくれたのかもしれない……。
「エルクさん絶対似合うと思うんですよー!」
「お、おう。ありがとうなテオ、そうだな、いやあでも俺じゃなくても似合いそ」
「いや!もうエルクさんにぴったりだと思ったんで
エルクさん以上に似合う人なんていないですよ!!!」
「あ、ありがとなアレク、でも流石にそっかあ俺かぶり物はちょっと」
「だいじょーぶ!肌に優しい素材で出来てるからかぶれる心配もないぜー!」
「か、かぶれとかはあんまり気にしてねえんだけどよ、その」
「丈夫に作っといたからちょっとやそっとじゃ壊れないよ!」
「お、おお!それは頼もしい!でも、でもなあ」
彼らの興奮に釣られてみょんみょんと跳ねるそれを見ながら、
エルクはやはりもう一度ため息を吐く。
え、俺これつけるの?つけて外出るの?
ちょっと待ってそれなりに顔知られてるんだけど
流石にこれをつけるのってちょっと、ちょっと……。
「エルク……ダメ……?」
「つけさせて頂きます!!!
そりゃあもうリーザのお手製ならつけるしかないだろう!!!!!」
潤んだ彼女の目に勝る物はなし。
アレクから奪い取るようにそれをかっさらい、頭に乗せた。
思った以上に質量のあるそれは、ゆらりゆらりと頭の動きに合わせて揺れる、ぶれる。
後輩達の、そして愛しい彼女の目が爛々と輝きエルクを見つめている。
あまりに素直な視線に思わずエルクはたじろく。
と同時にうねるそれ。
「……似合うか?」
「似合う!エルクとっても似合うわ!!!」
「そ、そうか!」
「うっわあなんかもう俺様感無量だぜー!」
「エルクさん!似合ってますよ!」
「お、おお!ありがとうなお前ら!大切にするからな!」
「エルクさん!格好いいです!」
「アレクそんな褒めんなよお照れるだろ!」
正直恥ずかしいと思っていたが、これだけ素直に反応されると気分がいいな。
熱烈な視線を一挙に受けながら、エルクは照れくさそうに頭を掻いた。
みょんみょんと動くそれはまるで喜んでいるように、彼の頭の上で跳ね続けていた。