『
こうして手紙を書くのはどのくらい久しぶりなんだろうね。
元気にしてる?してたらいいなあ。
今日はね、テオくんと一緒に少し遠くの森まで行ったの。
山の木々はもう枯れ木になっていたけど、
枝の隙間から見える空は澄んでいてとっても綺麗だったよ。
少し風が冷たくなってきたから、冬支度をそろそろはじめなくちゃねって言ったら、
テオくんは少し冷えた私の手をそっと握ってそうですね!って笑ったの。
手をつなぐと暖かいですね、しばらくは僕、これでいいですって。
エルクもそんな可愛い時代あったのかな。
しばらく歩いているとね、日差しがたくさん集まっている場所に出るんだけどね、
そこで私とテオ君は少しの休憩を取ったの。
切り株は太陽に照らされてじんわりと暖かくてね、
ああ、幸せだなあって。思わず顔が緩んじゃった。
こんな時、エルクはどうしてるかなって考えるの。
私の幸せが少しでもお裾分けできればいいなって。
でもきっと貴方のことだから、いいよ別に、なんてそっぽむくんだろうなあ。
あ、別に嫌って訳じゃないんだけどね。
私が嬉しかったり悲しかったりするように
きっとエルクも私の知らないところで嬉しかったり寂しかったりするんだろうね。
嬉しいときは一緒に喜びたいし、
悲しいときは一緒に悲しみたいな。
なんてわがままかな。
』
「会いたいな……」
リーザはそっと鉛筆を机の上に置いて丁寧に手紙を折る。
そうして何も書かれていない白い便箋にそうっとそれをしまって
はみ出さないように丁寧に糊付する。
この手紙に宛先は無い。
そもそも今彼がどこに居るなんてわからないから宛先なんてかけっこない。
でもやはり書かずにはいられない。
ねえエルク、私は今こうして過ごしてるよ。
貴方は元気に過ごしている?笑ってる?泣いている?
仕上げにピンクの可愛らしいシールで封をして、それをそのまま戸棚の奥にしまった。
宛先の無いこの手紙は君が見る事はないのだろうけど、
それでも私は君を思って書き続けるよ。