こんにちは、きこえてますか?もしもし?
コップ越しにちょこちゃんの声が聞こえる。私は答える。聞こえてますよ、どうぞ。
きこえてる?本当に聞こえてる?
聞こえてるよ、ちょこちゃん、ちゃんと聞こえてるよ。
どこからともなく持ってきた糸電話。
どうやらチョンガラさんに作ってもらったらしい。
チョンガラさんはよくちょこちゃんと遊んでいて、
こうしておもちゃを作る事だってよくある話だ。
そんな彼お手製の糸電話の片方を私に渡すと、ちょこちゃんは倉庫に手招きする。
そこで内緒話するの?と首を傾げる私の手を引いて、ちょこちゃんは倉庫に入る。
倉庫にあった少し古い座布団を扉の前に置いてまた手招きする。
ここに座れってことかな?
私が座布団の上に腰を下ろすと、
ちょこちゃんは満足そうに笑って奥からもう一枚座布団を片手に倉庫から出る。
そうしてドアの近くに座布団を敷いて、彼女も座り込んだ。
私とちょこちゃん、ドアを挟んで斜めに向き合うように座っている。
そう言えば昔おじいちゃんとこんな遊びをしたなあ。
私が遊んであげる側になったって知ったらおじいちゃん、なんて言うかな?
糸の邪魔をしないように、そうっとドアを閉める。
こうしたら相手の姿が見えないから、より秘密になったみたい。
少し埃っぽい倉庫だけど、糸電話のおかげでなぜだか暖かい、
懐かしい雰囲気に早変わりするから不思議。
りーざりーざ。
どうしたのちょこちゃん。
きこえますか、どうぞー。
ふふふ、聞こえてますよーどうぞー。
ひそりひそり、扉越しの秘密の会話。
こうしてただ挨拶を交わしているだけなのに、なんだかくすぐったい。
あのね、リーザ。
なあにちょこちゃん。
ちょこね、リーザのこと大好き。
瞬間こつん、という音とともに糸がだらりと垂れた。
ドアの向こうからは、きゃーいっちゃった!という彼女の声。
リーザがそっとドアを開くと、そこには糸電話を放って、
頬に手を当ててばたばたくるくる走り回ってるちょこの姿があった。
「ちょこちゃん、ちょこちゃん」
リーザはそんなちょこに手招きをする。
リーザ!とちょこは声を上げて、てとてと小走りでやってくる。
赤いスカートが走るたびにひらひらひらひら、揺れる。
そんな彼女が微笑ましくて可愛くて、頬が緩む。
そうしてやってきたちょこの耳元にリーザは口を持っていく。
あのね、ちょこちゃん。
誰にも聞こえないように小さく、耳打ち。
「わたしもちょこちゃんのこと、大好き」