インディゴスにも冬がやって来た。
お世辞にも積もっているとは言えない雪化粧程度でも、
エルクは興味津々で外を見つめている。
あまりに窓から下を覗くものだから、買い物へ出かけるか?なんて声をかけてると、
エルクはまるで好物が出て来たかのように丸い目を輝かせて、首を何度も縦に振った。
そういえば子供用の防寒着を用意してなかったな、とシュウは身支度の手を止める。
冬が本格化する前に買っておかないと風邪を引いてしまうな。
なら今日の買い物のついでに買ってやるのもいいだろう。
取りあえず、とシュウはエルクにいつものポンチョを渡すと、
彼は手慣れた手つきでそれを羽織り、ボタンをとめていく。
以前はかけまちがっていたポンチョのボタンも、
いつの間にか一人でとめられるようになったらしい。
姿見でポンチョ姿の自分を見ながら鼻息を荒くするエルクを見て、
シュウは思わず笑みをこぼした。
「うわあゆきー!ゆきー!」
「おい走ると危な」
外は思った以上に寒く、息が白く色付いた。
滑るから手を離さないように、と出かける前に忠告して、彼も大きく頷いたのだが、
眼下に広がる雪景色に興奮したのか、エルクはシュウの手を振りほどいて走り出した。
途端、ずざあ、と派手な音を立ててエルクは転倒する。
だからあれほど手を握っておけと言ったのに。
倒れたまま動かないエルクを抱き起こして、ポンチョについた雪を払う。
エルクは目に涙を溜めて下唇を噛みながらそんなシュウを見つめる。
頭は打ってないか、怪我はしてないか。
エルクに尋ねると彼はこくこく頷いてシュウの手を強く握った。
「泣かなかっ、た!」
「偉い偉い」
大きく鼻をすすって、目元の涙を乱暴に拭って。
こうして子どもは成長して行くのだな、
なんてガラにないことを考えながら、シュウはエルクを見下ろした。
今日は、ポトフでも作ってやろうな。