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冬アソートSS【アーク×ククル】

「はーあ寒いわねえ!寒い寒い!」
「寒いったってシオン山よりもましだろ」
「そうだけどー!寒いのは寒いのよもう寒い寒い!」

 寒いー!と連呼する彼女の吐息は真っ白に彩られていて、
触ったら暖かいのかな、なんてくだらない考えが頭によぎった。
そんな俺の隣りで、ククルはポニーテールを揺らしながらリズムを刻むように
「寒い」を連呼している。
もともと寒冷地帯の育ちなんだから寒さには慣れてるだろう?
なんて口を挟むと、ううん家は暖かかったから、なんて返答。
流石神官、お嬢様育ち。
俺の家には暖房器具なんてなかったぞ、と苦言を漏らすと、
彼女は悪戯っ子のような無邪気な笑みを浮かべて振り返った。

「ふふふ、羨ましいでしょう!」
「別に羨ましくないけどな」
「嘘つきー!アークの顔に書いてあるよー!羨ましいって!」

 そうして無邪気に跳ね回る彼女は、年上と言うにはなんだかあまりに可愛すぎて、
でも素直に言ってしまうのも悔しいような気がして
ぴょんぴょん眼下で跳ねているポニーテールを引っ張った。
ぎゃあ!なんて色気のない声を上げて、ククルは振り返る。
なによういきなり!頬を膨らまして抗議をする姿もやはり愛らしい。

「寒いって言うから暖めてあげようと思って」

 乱暴に彼女の手を取り引き寄せると、
やはりククルはうわあなんて色気の欠片もない声を上げた。
こんな声をあげる人を可愛いと思うなんて、本当に自分でもどうかしてると思う。
きっとこんなに彼女が可愛く見えるのも、愛しく見えるのも、全て冬が寒いからだ。
冬が、寒いから、きっと誰かと居たくさせるんだ。