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#檄ヤバ

 お前も始めろよ、とマモンにそそのかされてはじめたデビグラだったが、私のアカウントはとてつもなくルシファーに評判が悪いらしい。公序良俗にひっかかっているわけでもないし、個人情報を垂れ流しているわけでもない。その上他人のプライバシーを侵しているわけでもないし、何か攻撃的な事を書いているわけでもないのに、だ。
 写真の下に長々と文章を書くと野暮ったい気がして、コメントはいつも端的にまとめている。更新頻度が多いと留学に来た意味を問われてしまうから、多くても一週間に一回程度にとどめている。なのにどうしてか、ルシファーからの評判が悪い。評判が悪い、という表現は直接彼から言われた訳では無くて、RADでともに殿下に付き添う事が多いバルバトスから聞いた話だからだ。曰く、彼が眉を寄せて端末を見るときは、マモンの請求か、やらかした弟たちの目撃談か、私のデビグラらしい。
 ルシファーもデビグラを見るんだ、と思う一方で、せっかく更新しているのに評判が悪いというのは少し気になる。ということで写真も彼が好みそうなものに寄せてみたのに、結果はあまり芳しくなかった。(という話をバルバトスから聞いた)
「何が悪いのかわからないなあ」
 今日はアスモとお茶をしたので、おいしそうなお菓子ときれいな茶器を撮ってみた。アスモに写真の具合を聞いても「すごくいいよ!」と褒めてくれたから写真は問題ないはず。それでもなにかが足りない気がして、SNSのスペシャリストのレヴィに写真を見せる。いしかし彼は一瞥しただけで「ふうん、いいんじゃない」と、興味なさそうにパソコンのディスプレイの方を向いてしまった。
「おいしそうだし風景もきれいだし、これでルシファー褒めてくれるかな?」
「なに? 褒められたいの?」
「いや、そういうわけじゃないけど……なんだか評判悪いらしいし、ちょっとでも良く思われたいじゃない」
「へえ」
 写真をいつも通りのコメントを添えてアップロードする。角度も、光源もアスモに助言してもらった通りにした。自画自賛できるくらい、いい画像だ。読み込みの表示が出てしばらく、ぽすん、と音とともに写真が投稿される。さて褒めてくれるのかな。指で液晶を撫でながら、私はレヴィの部屋のベッドに寝転んだ。
「多分ね」
「うん?」
「褒めてくれないと思うよ」
 レヴィはため息交じりに言う。「そんなのわかんないじゃん!」と言う私に「絶対褒めてくれない」と頑ななレヴィ。すごく写真も頑張ったのに、風景も上品なのになぜそこまで言い切るのか。
 柔らかな照明。優雅なアフタヌーンティの一幕。いい写真だと思うんだけどな。
 写真と並ぶいつもの添え文句を指先で撫でながら、ルシファーの顔を重ねる。褒めてくれるといいけどなあ。