それはいくら何でもおかしいと、レヴィは眉を寄せた。私もつくづくそう思っていたので、実際に指摘されたら少し気恥ずかしい。だけどおかしいと言われたって自発的にやったことではないわけだし、実際には『されている』側だ。ついでに言えば彼だってきっと自覚はないわけで――うたた寝から本格的に眠りに入ったマモンは、私の膝の上で寝息をたてている。最近バイトを頑張っているみたいだし(実際にソロモンとその現場を見てしまったわけだし)少しぐらいは許してやってもいいかな、と思ってのこの状況だ。
こうしてみると私よりも何百年、何千年も年上なのが嘘みたいだ。疲れ切って寝息を立てるその表情は見方を変えれば年下のようにも見える。柔らかな白い髪。居心地のよい場所を探そうと頭を揺り動かすたび、毛先が緩やかに揺れた。
「レヴィ、しーっ」
人差し指を立てれば、レヴィの顔はますます険しくなった。「なんだそれラノベみたいな」だとか「うらやましくないけど、なんかむかつく」だとかぶつくさ言いながらも、彼がマモンをたたき起こす様子はない。音を立てず静かに隣に座って「バカ面」とレヴィはマモンの顔を覗き込んだ。「ちょっとわかる」と言えば、抗議のようにマモンの眉が寄る。
「最近バイトしてるんだって。知ってた?」
「……知ってる」
「モデルの仕事もしてるのにね……生活が苦しいのかな?」
ほんの好奇心で無防備な彼の頭をなでれば、ううん、と声が漏れた。眉間の皺が解かれて、穏やかな寝息が響く。その代わりに「こいつ……」なんてレヴィの声がして「ずるい」とお決まりの言葉が継がれた。
「レヴィもしてあげよっか、今度」
「こんなバカ面晒すなら死んだ方がマシ」
好き勝手言われているマモンは夢の中。膝の上で定位置を見つけたのか、ぴくりとも動かず寝入っている。
頭をもう一度なでれば、小さく声が漏れた。暖かな彼の熱が手のひらに滲み、ほんの少しだけ、くすぐったい。