DropFrame

留学生ちゃんが消えてしまわないか心配するマモン

 陽の光が透けるカーテン。カタカタと風で震える窓からは、穏やかな陽光しか差し込まない。白い布で覆われた家具。美しい絵がいくつも飾られている。全てが完成されたその空間に、異物なのは私だけだ。清浄な空気に弾かれそうになる気持ちを抑え、体を縮めて日光浴をする。嘆きの舘で唯一ここだけが、朝を迎えることが出来る部屋だ。
常闇の世界では陽の光が随分と恋しい。だから自然とここへとやって来てしまう。もしかしたら私の中に流れる『彼女』の欠片がそうしてしまうのかもしれないけれどーー。
暫く日に当たっていたら、突然乱暴に扉が開く。柔らかな昼溜りに、嘆きの館の夜が流れ込む。マモンは呆れた顔で「またここに居たのかよ」と、私の手を無理やりとって部屋から連れ出す。

「もうちょっとだけ、ダメ?」
「ダメ。寝るなら俺の部屋かお前の部屋へ行くぞ」
「マモンも来るの?」
「来ちゃ悪いかよ」

廊下に出れば、隠し扉の気配が消える。夜に引き戻された私は、肌に馴染んだ陰鬱な空気を纏い歩く。
握られた手はいつもよりも随分と強い。マモンを見れば、随分と険しい顔で彼は前を歩く。

「……どこにも行かないよ」
私がそう言えば彼はこちらを一瞥して

「そもそも、このマモン様が逃がすと思うのかよ」

と言葉を吐き捨てた。